『論衡』は中国正史以外では倭国・倭人についての最も古い史料となっています。
周王朝の時代に、倭人が朝貢していたことを伝えています。
ここでは『論衡』の中から、倭国・倭人に関して記述している部分についてのみ抜粋・記載します。
『論衡』での倭の記述
【成王時代】暢草を献じた
成王時 越裳獻雉 倭人貢鬯
『論衡』巻19 恢国篇第58
越裳とは、中国南部に居住していたとみられる民族です。
成王に対して、鳥のキジを献じたようです。

倭に関しては、”倭国”ではなく”倭人”と人種表記であるため、どんな国から来ていたのかは不明です。

成王とは、周王朝の第2代の王です。
在位期間は紀元前1042年~紀元前1021年とされているものの、諸説あります。
少なくとも紀元前1000年頃には倭人と中国王朝の交流があったことが分かります。
【時期不明】草を献じた
周時天下太平 越裳獻白雉 倭人貢鬯草 食白雉服鬯草 不能除凶
『論衡』巻8 儒増篇第26
鬯草は詳細が分かっていません。
「成王時 越裳獻雉 倭人貢鬯」の鬯(暢草)と同一とする考えも、別物とする考えもあります。
これは倭人?
倭人かどうかは明記が無いものの、倭人の可能性がある記述が2文あります。
使暢草生於周之時 天下太平 人來獻暢草
『論衡』巻5 異虚篇第18
暢草亦草野之物也 與彼桑谷何異
如以夷狄獻之則為吉 使暢草生於周家 肯謂之善乎
夫暢草可以熾釀 芬香暢達者 將祭灌暢降神
設自生於周朝 與嘉禾 朱草 莢之類不殊矣
異虚篇によれば、人々は暢草を献上したとしていて、これが倭人だったのでは?という説があります。
白雉貢於越 暢草獻於宛 雍州出玉 荊楊生金
『論衡』巻13 超奇篇第39
珍物產於四遠 幽遼之地 未可言無奇人也
また超奇篇では、倭からであるという明確な記載がないものの、暢草が献上され珍物産であると紹介されています。
暢草とは

暢草は詳細が分かっていませんが、ウコン説や、酒に香りづけしたもの説が定説です。
中でもウコン(鬱金草)は酒に浸して香りづけするもので、鬱鬯酒の原料であるという合体説が主流です。
匂いが独特なセリ科の植物説や、昆布説などもあります。
- ウコン説
-
ウコンの中国伝来は、『唐本草(新修本草)』という659年頃の本が初出とされ、同時期に伝来したと推測されます。
ウコンの日本伝来は18世紀初め1とされていますが、実は縄文時代の日本にも存在していて、それを献上したという主張です。
- 香りづけ説
-
医学博士で東北帝国大学(現在の東京大学)教授だった小酒井不木は、随筆「毒と迷信」の中で以下のように論じています。
周の成王の時、倭人が暢草を献じたと「論衡」といふ書に見えて居り、この暢草は香ひ草で、祭祀に当り、酒に和して地に注ぐと、気を高遠に達して神を降すの効ありと言はれて居た。
日本の名随筆 別巻78 毒薬(作品社 1997年刊) 毒と迷信2もったいない本舗 楽天市場店¥2,393 (2025/05/22 14:32時点 | 楽天市場調べ)ポチップ
論衡について
注釈・参考資料など
- https://www.tokyo-shoyaku.com/ohana.php?hana=205 ↩︎
- https://www.aozora.gr.jp/cards/000262/files/1460_45857.html ↩︎
『論衡』巻19 恢国篇第58
『論衡』巻8 儒増篇第26
『論衡』巻5 異虚篇第18
『論衡』巻13 超奇篇第39
コメント