『山海經』に記されている倭国に関する原文を抜粋して掲載しています。
一文しかないものの、解釈にはいくつか説があるので併せてご紹介します。
目次
原文
倭国に関する記述は、次の一文(と注釈)しかありません。
蓋國在鉅燕南倭北倭屬燕
『山海經』卷第12 海經 海內東經
注釈:盖国位于大燕国的南边倭国的北边倭国隶属于燕国
倭は燕国に属していたようですが、信憑性の判断が難しい状況です。
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『山海經』の信憑性
中国最古の地理書『山海經』は、古代中国の伝説的な話が多く盛り込まれており、信憑性に欠ける史料です。倭国・倭人についての最も古い史料として扱う媒体もありますが、内容を信頼できるかは賛否分かれます。
また、解釈にはいくつかの説があります。
🔍 解釈の分かれ目となるポイント
この文は句読点がなく、語順や関係が曖昧なため、どの語がどこにかかっているかによって意味が分かれます。主に以下の点で解釈が分かれます。
- 「倭屬燕」の「屬」は「隷属する」という政治的関係か、あるいは地理的範囲か?
- 「鉅燕南」「倭北」は蓋国の位置を指すとみるか?
注釈に準拠したストレートな解釈
注釈に基づいてそのまま読むならば、「蓋国は、鉅燕(大燕)の南、倭国の北に位置し、倭国は燕に属している。」となります。
- 「鉅燕の南、倭の北に蓋国がある」という地理的関係を明示。
- 「倭屬燕」は、倭が燕の支配下にあるという政治的解釈。
- 想定構文:[蓋國在 鉅燕之南、倭之北] + [倭屬燕]
また、直接的な支配下だったのか、間接的な(朝貢など)上下関係だったのかは議論の余地があります。
地理的構成に重点を置いた解釈
地理的な部分に焦点を当てて読み、「蓋国は、鉅燕の南方であり、倭の北方にある地域に位置し、倭もまた燕の南方にある。」と解釈する説です。
- 「屬燕」を、政治的隷属ではなく地理的含属と解釈。
- 「属する」は勢力下でなく、方角・範囲的なニュアンス。
- 想定構文:[蓋國在 鉅燕南、倭北],倭(亦)屬燕(之南)
蓋国と倭国がともに燕に属す解釈
燕に属しているという文の主語の対象を広めて、「蓋国は鉅燕の南、倭国の北にあり、蓋国と倭国はいずれも燕に属している。」と解釈する説です。
- 「倭屬燕」の「倭」は広義で「蓋国を含む地域」と解釈。
- 『山海経』の曖昧な地理感覚を前提に、「属する」対象を緩やかに捉える仮説。
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